主系列星には質量の大きな恒星ほど絶対等級が小さい(明るい)関係があります。これを質量光度関係と呼びます。
質量の範囲
主系列星は質量光度関係を使って絶対等級から質量がわかります。
こうして調べた恒星の質量は、およそ太陽の10倍~1/10の範囲に収まっていることがわかります。
質量が小さいと密度が高く気体を維持できず、質量が大きいと密度が小さく不安定な状態になり恒星になれないためです。
理想気体の状態方程式
理想気体の状態方程式より、気体の温度は圧力と体積の積であることが言えます。(気体の物質量と気体定数は無視して考えます。)
気体の体積が増えることは密度が減少することと同じ意味です。
つまり、気体の温度は圧力に比例して密度に反比例すると言い換えられます。
これを利用して、まずは恒星の質量と半径の関係を導きましょう。
恒星の表面重力
万有引力の法則から、恒星の表面重力=万有引力定数*恒星質量/恒星半径の2乗が成り立ちます。
つまり、恒星の表面重力は恒星質量に比例して恒星半径の2乗に反比例すると言えます。
恒星の密度
球の体積は4/3*円周率*球の半径の3乗、密度は質量/体積から求められます。
つまり、恒星の密度は恒星質量に比例して恒星半径の3乗に反比例すると言えます。
恒星の圧力
圧力は単位面積にのしかかる重さです。
恒星の圧力は恒星の密度と恒星の半径と恒星の表面重力の積に比例します。
この関係を恒星の質量と恒星の半径だけで表すと、
恒星質量/恒星半径の3乗*恒星半径*恒星質量/恒星半径の2乗=恒星質量の2乗/恒星半径の4乗となります。
つまり、恒星の圧力は恒星質量の2乗に比例し、恒星半径の4乗に反比例すると言えます。
質量と半径の関係
気体の温度は圧力に比例して密度に反比例する関係から、
恒星中心核の温度は恒星の圧力に比例して恒星の密度に反比例することが言えます。
整理すると、
(恒星質量の2乗/恒星半径の4乗)/(恒星質量/恒星半径の3乗)
=(恒星質量の2乗/恒星半径の4乗)*(恒星半径の3乗/恒星質量)
=恒星質量/恒星半径が成り立ちます。
つまり、恒星中心核の温度は恒星質量に比例して恒星半径に反比例すると言えます。
ここで、主系列星の恒星中心核の温度はおよそ1000万Kと言われていてその温度が一定だと考えると、恒星の質量は恒星の半径に比例すると言えます。
恒星の表面積と質量の関係
球の表面積は4*円周率*球の半径の2乗から求められます。
つまり、球の表面積は半径の2乗に比例します。
ここで、恒星の質量と半径は比例するので、恒星の表面積は恒星質量の2乗に比例すると言えます。
熱の逃げやすさと質量の関係
恒星表面のガスの厚さとガスの密度が熱の逃げやすさ(恒星表面の単位面積が出すエネルギー)を決めています。
ガスが厚く密度が高いほど熱は逃げにくいです。
つまり、熱の逃げにくさはガスの密度*半径に比例すると考えられます。
恒星の密度は恒星質量に比例して恒星半径の3乗に反比例し、質量と半径は比例することから、
恒星質量/恒星質量の3乗=1/恒星質量の2乗が成り立ち、
密度は恒星質量の2乗に反比例するとも言えます。
整理すると、(1/恒星質量の2乗)*恒星質量=1/恒星質量となり、
熱の逃げにくさは恒星質量に反比例すると言えます。
逆に言えば、熱の逃げやすさは恒星質量に比例すると言えます。
質量と光度の関係
光度(恒星の表面全体から出るエネルギー)=単位面積が出すエネルギー*恒星の表面積という関係があります。
単位面積が出すエネルギー(熱の逃げやすさ)は恒星質量に比例し、
恒星の表面積は恒星質量の2乗に比例すると言えました。
整理すると、
恒星質量*恒星質量の2乗=恒星質量の3乗となり、
光度は恒星質量の3乗に比例すると言えます。ただしこれは理論値です。
実際は恒星を取り巻くガスの性質から明るく見えて、光度は恒星質量の3乗から5乗に比例する観測結果が得られます。