ここでは日の出・日の入りの時刻を求める方法を説明します。

仮定時刻における太陽の位置を計算する

太陽が昼12時に日の出・日の入りすると仮定し、観測地が昼12時のときの下記値を計算します。
・太陽の視赤経
・太陽の視赤緯
・太陽と地球の地心距離
・観測地の恒星時

太陽の視赤経αと太陽の視赤緯δは、太陽の黄緯を0°としたとき、 太陽黄経ψと平均黄道傾斜角εから下式で計算できます。

sinδ = sinψ * sinε
sinα = sinψ * cosε / cosδ
cosα = cosψ / cosδ

ただし、sinα ≥ 0 のとき、0° ≤ α ≤ 180°、
sinα < 0 のとき、180° < α < 360°です。

太陽と地球の地心距離r(au)は、太陽黄経ψsと、 地球楕円軌道の離心率e、地球の近日点黄経ψeから下式で計算できます。
e = 0.01671022
ψe = 102.94719°
ψ = ψs + 180° - ψe
r = 1 - e * cosφ
cosφは上で求めたψを用いて下式で計算できます。
e2 = e * e
s2 = tanψ * tanψ
s2e = s2 * e
x = 1 + s2 - e2
y = √s2e * s2e - (1 + s2 - e2) * ((s2 + 1) * e2 - 1)
90° < ψ < 270°のとき、
cosφ = (s2e - y) / x
ψ < 90° または ψ > 270°のとき、
cosφ = (s2e + y) / x
cosψ = 0 (ψ = 90° または ψ = 270°) のとき、
cosφ = e

昼12時における観測地の恒星時は、太陽黄経の算出方法が2000.0分点なので、 2000.0分点のグリニッジ恒星時を用いて、恒星時のページを参考に計算してください。

太陽の赤道座標が1日で変化する量

2000年1月1日から3日の日本時12時(世界時3時)における、太陽の黄経、赤経、赤緯を下表に示しました。

黄経赤経赤緯
1 279°59′42″ 18h43m29s -023°03′46″
2 281°00′52″ 18h47m54s -022°58′56″
3 282°02′02″ 18h52m19s -022°53′40″

太陽視半径、太陽視差、大気差の影響を無視したとき、千葉県銚子市犬吠埼灯台から1日で太陽が観測できる時間を計算します。
観測地緯度 : 北緯35°42′28″ = 35.707778°

2000年1月1日のとき、
太陽赤緯 : -023°03′46″ = -23.062778°
cosH1 = tan(-23.062778°) * tan35.707778°
cosH1 = -0.42576852 * 0.71877876
cosH1 = -0.30603337
H1 = 180 - 107.82034472 = 72.17965528°
H1 = 72.17965528 / 15 = 4.81197702h
1日で観測できる時間は、4.81197702 * 2 / 1.00273791 = 9.59767647h
0.59767647 * 60 = 35.8605882
0.8605882 * 60 = 51.635292
9時間35分51秒

2000年1月2日のとき、
太陽赤緯 : -022°58′56″ = -22.982222°
cosH2 = tan(-22.982222°) * tan35.707778°
cosH2 = -0.42410867 * 0.71877876
cosH2 = -0.30484030
H2 = 180 - 107.74855623 = 72.25144377°
H2 = 72.25144377 / 15 = 4.81676292h
1日で観測できる時間は、4.81676292 * 2 / 1.00273791 = 9.60722213h
0.60722213 * 60 = 36.4333278
0.4333278 * 60 = 25.999668
9時間36分25秒

したがって、太陽赤緯が1日異なると1日で太陽が観測できる時間が約34秒変化します。
秒単位の精度を求める日の出・日の入り計算において、地平座標における太陽の高度が 0°付近の時刻についての赤道座標を計算することが必要であることがわかります。

太陽の地心距離が1日で変化する量

地心距離は太陽の視半径と視差を求めるときに使用します。
2000年1月1日から3日の日本時12時(世界時3時)における、太陽の黄経、地心距離(au)を下表に示しました。

黄経地心距離
1 279°59′42″ 0.983311
2 281°00′52″ 0.983299
3 282°02′02″ 0.983292

太陽視半径
地球から観測した天体の視半径は下式で求めることができます。
sinS = 天体の赤道半径 / 地球から天体までの距離
太陽の赤道半径は696000(km)、1天文単位は149597870.700(km)なので、
地球から太陽までの距離が1天文単位のときの太陽視半径S0は、
sinS0 = 696000 / 149597870.7 = 0.00465247
S0 = 0.26656801°
したがって、太陽から地球までの距離がd天文単位のときの太陽視半径Sは、
S = 0.26656801° / d

太陽視差
地球から観測した天体の視差は下式で求めることができます。
sinπ = 地球の赤道半径 / 地球から天体までの距離
地球の赤道半径は6371(km)、1天文単位は149597870.700(km)なので、
地球から太陽までの距離が1天文単位のときの太陽視差π0は、
sinπ0 = 6371 / 149597870.7 = 0.00004259
π0 = 0.00244008°
したがって、太陽から地球までの距離がd天文単位のときの太陽視差πは、
π = 0.00244008° / d

高度0°の大気差は時間や地心距離で変動せず0.575783°なので、
太陽視半径、太陽視差、大気差の補正値は、

2000年1月1日のとき、
地心距離 : 0.983311(au)
太陽視半径 : 0.26656801 / 0.983311 = 0.27109227°
太陽視差 : 0.00244008 / 0.983311 = 0.00248149°
h1 = 0.00248149 - 0.27109227 - 0.575783 = -0.84439378°
sinh1 = -0.01473852

2000年1月2日のとき、
地心距離 : 0.983299(au)
太陽視半径 : 0.26656801 / 0.983299 = 0.27109558°
太陽視差 : 0.00244008 / 0.983299 = 0.00248152°
h2 = 0.00248152 - 0.27109558 - 0.575783 = -0.84439706°
sinh2 = -0.01473858

2000年1月1日12時(日本時)の太陽赤緯で、
千葉県銚子市犬吠埼灯台から1日で太陽が観測できる時間を計算します。
太陽赤緯 : -023°03′46″ = -23.062778°
観測地緯度 : 北緯35°42′28″ = 35.707778°
cosH0 = tan(-23.062778°) * tan35.707778°
cosH0 = -0.42576852 * 0.71877876
cosH0 = -0.30603337
cos(-23.062778°) = 0.92007618
cos(35.707778°) = 0.81200430
0.92007618 * 0.81200430 = 0.74710581

sinh1のとき、
cosH1 = -0.01473852 / 0.74710581 + 0.30603337
cosH1 = 0.28630588
H1 = 73.36307687°
H1 = 73.36307687 / 15 = 4.89087179h
1日で観測できる時間は、4.89087179 * 2 / 1.00273791 = 9.75503517h
0.75503517 * 60 = 45.3021102
0.3021102 * 60 = 18.126612
9時間45分18秒

sinh2のとき、
cosH2 = -0.01473858 / 0.74710581 + 0.30603337
cosH2 = 0.28630580
H2 = 73.36308166°
H2 = 73.36308166 / 15 = 4.89087211h
1日で観測できる時間は、4.89087211 * 2 / 1.00273791 = 9.75503581h
0.75503581 * 60 = 45.3021486
0.3021486 * 60 = 18.128916
9時間45分18秒

したがって、太陽視半径と太陽視差は1日経過した程度ではほぼ変化せず、
秒単位の精度を求める日の出・日の入り計算において、
地平座標における太陽の高度が0°付近の時刻についての
地心距離を計算することは不要であることがわかります。
つまり、観測日12時における地心距離を使用して問題ありません。

参考ページ
Earth Fact Sheet
Earth Mean Orbital Elements (J2000)
Orbital eccentricity, Longitude of perihelion
http://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/earthfact.html
Sun Fact Sheet
Bulk parameters
Volumetric mean radius (km)
http://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/sunfact.html

日の出・日の入り付近の時刻についての赤道座標を計算する

2000年1月1日12時(日本時)の千葉県銚子市犬吠埼灯台における、 ユリウス通日、太陽赤経、太陽赤緯、恒星時、緯度、経度、補正値は下記値です。
ユリウス通日 : 2451544.625
太陽赤経 : 18h43m29s = 18.72472222h = 280.870833°
太陽赤緯 : -023°03′46″ = -23.062778°
恒星時 : 19h03m50s = 19.06388889h = 285.958333°
緯度 : 北緯35°42′28″ = 35.707778°
経度 : 東経140°52′7″ = 140.868611°
補正値 : sinh = -0.01473852

2000年1月1日12時(日本時)における太陽の時角は、
285.958333 - 280.870833 = 5.0875°
日の出の時角は、-73.36307687°
日の入りの時角は、73.36307687°
日の出の12時からの経過日数Drは、
Dr = (-73.36307687 - 5.0875) / 360
Dr = -0.21791827
日の入りの12時からの経過日数Dsは、
Ds = (73.36307687 - 5.0875) / 360
Ds = 0.18965438
日の出のユリウス通日JDrは、
JDr = 2451544.625 - 0.21791827 = 2451544.40708173
日の入りのユリウス通日JDsは、
JDs = 2451544.625 + 0.18965438 = 2451544.81465438
ここで得られたJDrとJDsを用いて、
日の出・日の入り付近の時刻についての太陽の赤道座標を計算します。
比較のため、このJDrとJDsについての時刻を計算します。
JDr = 2000年1月1日6時46分11秒 (日の出付近の時刻)
JDs = 2000年1月1日16時33分6秒 (日の入り付近の時刻)

日の出付近の時刻についての赤道座標と恒星時
太陽赤経 : 18h42m32s = 18.70888889h = 280.633333°
太陽赤緯 : -023°04′45″ = -23.079167°
恒星時 : 207°16′55″ = 207.28194444°

日の入り付近の時刻についての赤道座標と恒星時
太陽赤経 : 18h44m20s = 18.73888889h = 281.083333°
太陽赤緯 : -023°02′53″ = -23.048056°
恒星時 : 354°26′13″ = 354.43694444°

日の出・日の入り時刻を計算する

2000年1月1日の千葉県銚子市犬吠埼灯台における、
日の出・日の入り時刻を計算します。
緯度 : 35.707778°
経度 : 140.868611°
補正値 : sinh = -0.01473852

日の出時刻
太陽赤経 : 280.633333°
太陽赤緯 : -23.079167°
恒星時 : 207.28194444°
cosH0 = tan(-23.079167°) * tan35.707778°
cosH0 = -0.42610646 * 0.71877876
cosH0 = -0.30627627
cos(-23.079167°) = 0.91996409
cos(35.707778°) = 0.81200430
0.91996409 * 0.81200430 = 0.74701480
cosH = -0.01473852 / 0.74701480 + 0.30627627
cosH = 0.28654638
H = -73.34869466°
日の出付近の時刻における太陽の時角は、
207.28194444 - 280.633333 = -73.35138856°
日の出付近の時刻からの経過日数Dr1は、
Dr1 = (-73.34869466 + 73.35138856) / 360
Dr1 = 0.00000748
したがって、日の出時刻Trは、
Tr = (0.5 - 0.21791827 + 0.00000748) * 24
Tr = 0.28208921 * 24 = 6.77014104h
0.77014104 * 60 = 46.2084624
0.2084624 * 60 = 12.507744
6時46分12秒

日の入り時刻
太陽赤経 : 281.083333°
太陽赤緯 : -23.048056°
恒星時 : 354.43694444°
cosH0 = tan(-23.048056°) * tan35.707778°
cosH0 = -0.42546503 * 0.71877876
cosH0 = -0.30581523
cos(-23.048056°) = 0.92017681
cos(35.707778°) = 0.81200430
0.92017681 * 0.81200430 = 0.74718753
cosH = -0.01473852 / 0.74718753 + 0.30581523
cosH = 0.28608990
H = 73.37599184°
日の入り付近の時刻における太陽の時角は、
354.43694444 - 281.083333 = 73.35361144°
日の入り付近の時刻からの経過日数Ds1は、
Ds1 = (73.37599184 - 73.35361144) / 360
Ds1 = 0.00006217
したがって、日の入り時刻Tsは、
Ts = (0.5 + 0.18965438 + 0.00006217) * 24
Ts = 0.68971655 * 24 = 16.5531972h
0.5531972 * 60 = 33.191832
0.191832 * 60 = 11.50992
16時33分11秒

前に求めたJDrとJDsを比較すると、
6時46分12秒 (日の出時刻)、6時46分11秒 (日の出付近の時刻)
16時33分11秒 (日の入り時刻)、16時33分6秒 (日の入り付近の時刻)
したがって、分単位の精度を求める日の出・日の入り計算において、その付近の時刻についての赤道座標を計算することは不要であることがわかります。 分単位の精度であればその付近のユリウス通日を使用しても問題ありません。